ひこばえの。
満開になった桜の下を少しだけ歩いて、何度もカメラを向けるけど、
なかなか撮ろうという気分にはなれない。
曇り空、というのもあるけどね。
毎年、なんとか桜は咲くわけで。
時期が早い遅いというのはあれど、その姿に大差はないのね。
通りすがりにちょっと撮ったって、それはただの桜でしかなく。
肉眼で見るほど、感動的には捉えづらいものです。
でもそれが、桜の魅力なのかなぁ。なんて、ふと。
変わらず同じように咲くからこそ、その時の心の状態が克明に表れる。
喜びとか苦しみとか迷いとかが、真っ白なカンバスに染み付くみたいに。
写真で記録を残しても、そんな記憶までは写らないもんね。
人の心の繊細な部分を、穏やかに、ドラマティックに掻き立てる。
写真を撮るのは大好きだけど、どうしたって敵わないものがあると思い知るよ。
そういうの、とてもいい。
心の動きに気付く。
私がいちばん、ないがしろに出来ないこと。
それを見過ごすと、ただ息をするだけの人生になってしまう気がして。
今年の桜は、どんなふうに映っていますか?
ひこばえが咲かせた花を、たくましく思います。