どうぶつえん。
動物たちを見ていると、心が穏やかになる。
長い鼻や、大きな翼や、鋭い爪や、身体のバネを使って、生きるという使命に忠実に従う。
柵を隔てた、向こう側とこちら側。
囲われているのは本当はどっちなんだろうと、ぼんやり思う。
大人になるにつれ、周りを見渡しては馴染むように努力をするようになる。
自分だけぴょこっと飛び出したり、ぼこっとヘコんだりしないように。
そんなことで疎ましく思われたり空気を濁すのは、いささか面倒だもの。
日常業務をスムーズにこなすために、個性を少し、抑えこむ。
ゾウさんのいる場所より、もしかしたらここは狭いのかもしれない。
かけっこがはやい子。
絵を上手に描く子。
車の名前をたくさん知ってる子。
お歌が大好きな子。
おとなしいけど優しい子。
がんばりやさん。
ちからもち。
おこりんぼう。
幼い頃にそれぞれが持っていたそんな宝物を、もっと見せて欲しいのに。
そうしたらなんだか色んなことが、許し合えるんじゃないかな。
なんであの人、いつもあんなにイライラしてるんだろう?という疑問も、
子供の頃からおこりんぼうなんだよ。で、そっか、じゃぁしょうがないね。
ってなる気がする。
そういう個性が、私は大好きなんだけどな。
ゾウさんの長い鼻も、キリンさんの長い首も、大好きなんだけどな。