ノスタルジックな空。
都会のビルの隙間から覗く、盛り上がる雲の峰。
「夏だよ!」って、空が言ってる、月曜日。
朝早くから、近所の小学校ではラジオ体操が始まる。
あぁ、あったなぁ、スタンプカード。
毎日行くと、アイスキャンディやらノートやらをもらえたっけ。
友達と通った市民プール、
浮き輪を膨らます時のビニールの匂い、
泳いだ後に食べたスピンやカール、
指の間に食い込むビーチサンダルの鼻緒、
陽炎が揺れる多摩川の土手、
川風があおる蒸した草の香り、
こめかみを伝う汗の筋と、張りついた前髪、
疲れた足で辿った、家までの気が遠くなるような道のり、
夕暮れにコウベを垂れるヒマワリの花。
幼かった私が見ていたあの景色は、今でもまだ、誰かの瞳に映っているんだろうか。
痩せっぽっちの足で踏みしめて歩いたあの道は、今でもまだ、残っているんだろうか。
水を吸った水着やタオルがあんなに重く感じたのは、錯覚だったのかな。
夏休みの風景は、目を閉じればいくらでも思い出せる。
国道を走る車の騒音も、照り返す熱気も、むせ返るような砂埃さえ。
私はこんな、心に染みついた子供の頃の景色が忘れられなくて、
それがなぜが少しだけ胸をつついて、キリキリするような痛みを伴う。
夏の空はとてもノスタルジックで、妙にセンチメンタルになってしまうんだな。
もしあの頃に戻れるのなら、日に焼けた小さな少女の手を引いて、一緒に歩きたい。